新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜

えっ？
な、何？
いきなり肩を叩かれたので驚いて振り返ると、2人の学生風の男性が笑いながら話し掛けてきた。
えっ、えっ？　私？
話の内容が分からず返答に困っていると、両サイドから挟まれるようにして立たれてしまい、その場から立ち去ろうとしても身動きが取れなくなってしまった。
ちょ、ちょっと待って。
な、何、この人達。
「キャッ……」
次の瞬間、いきなり腕を掴まれて強く引っ張られた。
「い、嫌。やめて！　Don’t touch me」
後ろから物凄い力で腕を引っ張られたので、必死に振り払おうとした。
「Is it for anything for my girlfriend?」
エッ……。
早口で何を言っているのか良く分からなかったが、聞き覚えのある声に振り返ると高橋さんが2人の男性に話し掛けていた。
「た、高橋さん！」
「I……I am sorry, It was mistaken identity」
な、何、何？
「If it is mistaken identity, Will be separated from her」
「Oh! Sorry!」
私の両サイドに居た2人の男性のうちの1人が、微笑んで両手を肩の位置まで挙げるジェスチャーをすると、もう1人の男性と共に私から離れて前に立った。
「I am sorry, But will you open a way because you hurry?」
速過ぎて、何を話しているのかよく分からない。
ハッ？
2人の男性は、どうぞというジェスチャーをしながら道を空けてくれた。
「Thank you!」
すると高橋さんは、私の腕を掴んだまま速い歩調でどんどん前へと進んでいくので、途中で息切れして堪らず話し掛けた。
「あ、あの、高橋さん。あの……」
それでも高橋さんは、黙ったまま一向に止まってくれない。
聞こえていないの？
「あの、高橋さん！」
うわっ。
突然、高橋さんがショップに入って私の両腕を持って向かい合うように立ち止まったので、目の前に迫った高橋さんの顔を見て、思わず仰け反ってしまった。
「此処のショップを出て、何処に行ってた？」
エッ……。
見ると、入ったショップは先ほど高橋さんが試着していたショップだった。
「何処に行ってた」
「す、すみません。あの、トイレに……」
どうしよう。高橋さん。きっと、怒っているよね。何も言ってくれない。
「すみません。トイレの帰りに迷ってしまって……それで……」
「はぁ……」