新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜

「Sorry!」
「So Sorry!」
ウロウロしていて擦れ違った男性とぶつかってしまい、男性に謝られて咄嗟にお辞儀をしてこちらもお詫びした。
土曜日の午後になって、だいぶアウトレット内も人が増えてきている。そのせいもあって、人が多くて案内板が見つけられない。そのうち、後ろから来た観光ツアーか何かの団体の波にのまれ、前方が見えなくなってしまった。早くショップに戻りたいのに……もう最悪。
きっと、高橋さんも心配しているかもしれない。早く戻らなくちゃ。
あっ!
団体客が各ショップに流れていったせいか、少し前方が開けて見覚えのあるショップが見えた。
良かった。戻ってこられた。
ホッと胸を撫で下ろしながら、急いでショップに入って高橋さんを捜したが、高橋さんの姿が見当たらない。
先ほどの試着室にも行ってみたが、そこにも高橋さんの姿はなかった。
高橋さん。何処に行っちゃったんだろう?
「あら? 先ほどの……」
高橋さんを捜して店内を動き回っていると、さっきの店員さんに声を掛けられた。
「ど、どうも。あの、高橋さん……いえ、一緒に居た男性を見ませんでしたか?」
「お連れ様ですか? その方でしたら、もうこちらを出られて行かれましたよ。そうですねぇ。10分前ぐらいだったでしょうか」
もう、出ちゃったんだ。
「そ、そうですか。ありがとうございます」
「あの、お客様……」
急いでショップを出る私に、後ろから声を掛けられたような気がしたが、今は高橋さんを捜す方が先決だと思った。
何処に行っちゃったんだろう? 高橋さん。
ハッ!
高橋さんらしき人の後ろ姿が見えたので、追い掛けた声を掛けた。
「高橋さん!」
エッ……。
振り返ったその人は、高橋さんではなく別人だった。
「す、すみま……Sorry」
間違えちゃった。
すると、その人はニコッと笑ってそのまま行ってしまった。
高橋さん。何処に行っちゃったんだろう? それにしても、広すぎる。道幅も広いし、人混みの中から高橋さんを捜すには、私の身長では至難の業。きっと、高橋さんも心配して私のことを捜してくれているはず。
ああ……。あの時、トイレなんかに行くんじゃなかった。
途方に暮れながら、何度も同じ道を行ったり来たりして高橋さんを捜したが見つからず、このままでは埒があかないので、仕方なく先ほどのショップにもう1度戻ってみることにした。
あの店員さんに、また声を掛けられたら気まずいけれど仕方ない。
手袋をしていなかったので手が冷たい。
トイレの前を通って、このまま真っ直ぐ行けば……。
「Hey! How older you?」