高橋さんは、歩きながら私の顔を覗き込んだ。
「いろいろ、ご迷惑ばかり掛けてしまって、私・・・・・・」
「フッ・・・・・・迷惑だと思ったら、もうとっくに帰ってる。せっかく来たのだから、嫌な思いはしたくないだろう? 買った物を盗まれたとか、財布を盗られたとか、そういうダメージを受けるようなことは後々まで記憶に残る。ほんの一瞬、ほんの何秒かの自分の行動に緊張感を持つだけで、それが未然に防げるものなら、それはお金では買えない価値のある時間になる。車の運転でも何でも、その一瞬、その何秒かを待つことで、安全や安心が買える。買えるという言い方は、少し語弊があるかもしれないが。その一瞬、その何秒かを待たなかった故に、それが事故に繋がったり違反に繋がったりもする。かえせば、事故が起きればその一瞬、その何秒かよりその何倍もの時間と心労が増えてしまう。物事の価値というのは、決してお金では買えないものであり、その価値は心にゆとりがなければ見出せないと思う」
高橋さん・・・・・・。
「さて、問題。心にゆとりを持つためには、どうする?」
高橋さんは、左手の人差し指を顔の前で立てた。
「えっ? い、いきなり聞かれても・・・・・・」
「どうすればいいと思う?」
心にゆとりを持つだめには、どうしたらいいんだろう? 
「心に・・・・・・うわっ!」




『ARIKIパンツ』について
有木株式会社様の許可を頂いて、名称記載をさせて頂いております。