「すみません。コインがないので、これで」
「端数は、いいから」
「でも・・・・・・」
「カードで買っているし、コインが増えても困るだろう? いいから、しまっておけ」
そう言って、高橋さんは20ドル札1枚を私のお財布に差し込んだ。
「何か、すみません。あっ! 後で何か食べる時とかに、私にこの20ドル札で払わせて下さいね」
「フッ・・・・・・何か食べる時か。飲む時じゃないんだな」
「えっ?」
「じゃあ、その食べる時間も必要だから早く行こう」
「はい」
あれ?
外に出てコートを着ようと思ったが、何故か高橋さんがドアロックを解除してくれない。
「ちょっと、駐車場の場所を移動するから」
高橋さんはエンジンを掛けると、一旦駐車場から車を出してアウトレット内の他の駐車場に車を移動させた。
「この辺で、いいか」
独り言のように言うと、車を停めた高橋さんがドアロックを解除してくれた。
「さっきのところとは、また違う駐車場なんですね」
「ああ。此処からの方が、これから回るお前が行きたいショップが近い」
「そ、そうなんですか」
凄いな。
高橋さんは、やっぱり卒がないというか、時間の使い方に無駄がない。
コートを着て外に出ようと思ったが、ポケットに入っていた午前中にお土産を買ったショップで貰ったオーナメントホルダーの入った透明のビニール袋を置いて行こうと思い、助手席のシートの上に置いてドアを閉めた。
「それ、置いて行くのか?」
「はい。なくしちゃうといけないので」
「それならば、それもトランクに入れておこう」
高橋さんは、運転席から助手席に置いたビニール袋を掴むとトランクを開けたので、慌ててトランクの傍に行った。
「買ったショッピングバッグの中に入れておくぞ」
「はい。ありがとうございます」
「これで、ヨシ! 車内の見えるところに何か置いてあると、狙われることが多い。こっちは盗る気になれば、オーディオでも持って行くから」
オーディオ!
「そ、そうなんですか。すみません」
また、やってしまった。
「少しでも、自己防衛しないとな。行こうか」
「はい」
朝から何度も私の無自覚な行動に、高橋さんは疲れちゃっているんじゃないかな。
「どうした? 疲れたのか?」
エッ・・・・・・。
「い、いえ。そんなことないです。ただ・・・・・・」
「ん?」