新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜

そんな思いのまま編み上げのブーツを履いてみたが、何だか今の出来事があったせいもあってか、あまり良く思えなくなってしまった。
結局、元の場所にブーツを戻し、気を取り直してさっきと同じようなデザインのブーツを探そうと思い、根気よく70％OFFのコーナーでデザインとサイズを探し始めた。
「真剣な顔で、探してるな」
エッ･･････。
夢中になって同じようなデザインのブーツを探していると、不意に後ろから声を掛けられた。
「そ、そうですか？」
「ああ。後ろから見ていても、必死さが伝わってきたぞ」
うっ。
何だか、見透かされてる？
「そんなに私、ひ、必死で探しているように見えましたか？」
何とか冷静さを保とうと、何気なくブーツを手にとってサイズを確認しているふりをした。「あっ･･････あった！」
「ん？」
「あれ？　何で37のところに･･････」
「結構、いろんなサイズが入り交じってるから、よく見るとあったりするんだ」
「そうなんですか」
さっきキープしていたブーツの色違いが、探していたサイズの棚とは違うサイズの棚に置いてあったので驚いた。それに色は違うけれど、さっきキープしていた色よりもこっちの色の方が好きかもしれない。早速、履いてみたが、サイズもちょうど良かった。
「それがいいのか？」
「はい」
すると、高橋さんは店員さんに声を掛けてくれて、同じブーツの左足を持って来て欲しいとお願いしてくれた。
良かった。さっきと同じデザインの、ブーツの色違いが見つかって。
店員さんがニコニコしながら左足のブーツを持って来てくれると、履かせてくれた。
「どうだ？」
「はい。ちょうどいいです。これにします」
「そう。良かったな。サイズがあって」
「はい。高橋さんも、何かありましたか？」
履いていたブーツを脱いで、自分の靴に履き替えながら高橋さんが手に箱を持っていたので聞いてみた。