新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜

急いで部屋に戻り、着替えて身支度を整えながら最後にもう1度鏡を見た。
今日の格好は、まゆみが絶賛していた 『ARIKIパンツ←*末文に注釈有り*』
というか、今回の出張のスーツは嵩張らないようにしないといけないということで、まゆみや折原さんのアドバイスを事前に貰って色々どうにかして荷物を減らしたかった。でもどうしてもスーツを持って行くとなると、バゲージの中で皺にならないようにと思うと場所をとってしまう。そんなことを悩んでいたら、折原さんが 『ドレスコードがあるわけじゃないし、会社に行く時はジャケットにパンツで良いのよ』 とアドバイスをくれて、その話をまゆみに言うと、それなら私も履いてる 『ARIKIパンツ』 っていう良いパンツがある!と教えてくれた。
皺にならずコンパクトにたため、更にストレッチが思いっきりきいているので機内でも疲れないとのこと。しかも履きやすく脱ぎやすいウエストゴム。カチッとしたスーツは確かに格好いい。けれど、長時間座ったままの機内とかでは不向き。出来るだけ楽なスタイルで搭乗したい。まして、冬だとコートも着ているのでトイレとか大変だったるするわけで……。そんな経緯から 『ARIKIパンツ』 を3本持ってきた。1本は履いてきて、2本はバゲージの中。まゆみの言っていた通り、皺にもならず場所も取らず本当に出張や旅行には便利なパンツだった。
お弁当作り、楽しかったな。結局、二日酔いだったことが高橋さんにバレちゃった。でも、今はアウトレットに行かれる嬉しさの方が勝ってる。お弁当も持って・・・・・・ね。
勢いよくコートを掴んで急いで部屋を出ると、支度を済ませた高橋さんがソファーに座って待っていた。
あっ・・・・・・。
ソファーに座っていた高橋さんは、ニット帽を被ってスヌードを巻いていた。
カジュアルなスタイルは何度か見たことがあったけれど、ニット帽とスヌード姿の高橋さんは初めてだった。
な、何か、高橋さん。可愛い。でも、やっぱり何を着ても格好いい。
「何?」
「あっ。い、いえ、何でもないです。お待たせしました」
「それじゃ、行こうか」
「は、はい」
「何だか、子供みたいに嬉しそうだな」
「また、子供扱いですか! 高橋さん」
「はい」
うっ。
そ、そんなに近づかないで。もうドキドキしちゃうから。
咄嗟に後ろに下がろうとするとまだ二日酔いが残っていたのか、よろけてしまい、高橋さんが笑いながら肩を支えてくれた。
エレベーターを待っていると、何故か高橋さんが私をジッと見ている。
なんだろう? な、何?
「そのパンツ……」
エッ……。