新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜

「電子レンジ、終わってるぞ」
「えっ? あっ、すみません」
つい、見入ってしまい、手が疎かになっていた。
慌てて電子レンジから取り出し、次のイトウのご飯をまた電子レンジに入れてタイマーをセットして、出来上がったご飯をラップに移していると、高橋さんが先に出来上がっていたラップにのせたご飯をおもむろに右掌の上に置いて梅干しを中央にのせると、ラップでご飯を包むようにしておにぎりを握り始めた。
高橋さんが作る、三角のおにぎり。
「これが、作業B」
プッ!
「何だよ?」
「あっ。い、いえ、何でもないです」
何だか可笑しくて、吹き出してしまった。作業AとBは、こういうことだったんだ。
「馬鹿にするなよ。結構、ああいうところに持って行くと、おにぎりは一層美味しく感じるぞ。時間も限られているし、フードコートは週末は混んでいることが多いから時間のロスも防げてかなり重宝するんだ」
「高橋さん。何でも知っていて、凄いです」
うふっ。
「お前。何、ニヤニヤしているんだ?」
「そ、そうですか? 作業Aが、た、楽しくて。アハハッ・・・・・・」
内心、高橋さんとお弁当を持ってアウトレットに行かれるなんて、想像もしていなかったので嬉しくて仕方がない。だから、自然と先程から笑みが零れてしまっている。
その後、卵焼きを作ってタンブラーにお茶を入れて、持って来ていたエコバッグにお弁当を入れた。
「二日酔いは、どうだ?」
「はい。お陰様で、だいぶ良くなりました」
二日酔いも朝ご飯を食べたせいか、だいぶ良くなっていた。
「フッ・・・・・・やっぱり、二日酔いだったんだ」
ハッ!
「ち、違います。ちょっと、その・・・・・・飲み過ぎただけです」
「同じだろう?」
「ちょ、ちょっと違います」
「意味不明なこと言ってないで、早く着替えてこい。出掛けるぞ」
「は、はい」