新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜

「フッ・・・・・・分かった」
「分かってないです」
「ハッ?」
「だいたい高橋さんは、女心が全然分かってないですよ」
「・・・・・・」
「山本さんのことだって、最初から男だって言ってくれていたら、あんなに悩んだりしなくて済んだんですから。ほんっとーに、悩んだんですからね。それなのに、一緒に食事に行く約束しちゃったりとか。もう、ドン引きするしちゃって本当にビックリですよ。ランチに山本さんが登場した時は、どうしたらいいか分からなくて、泣きたかったんですから」
何だか抑えようとしても、どんどん勝手に1人で話してしまっている。
「・・・・・・」
「いつも高橋さんは冷静だから、そんなこと考えられないかもしれませんけど、あれは相当心臓に良くなかったです。はい」
「そうか・・・・・・」
高橋さんの声が遠くで聞こえていて、必死に目を開けていようとしても自然と目を瞑ってしまっている。
「そうですよ・・・・・・高橋さんは・・・・・・全然・・・・・・女の子の気持ちが・・・・・・分かってません・・・・・・分かってないんだから・・・・・・」
「悪かった」
「高橋さん・・・・・・謝らなくても・・・・・・高橋・・・・・・さん」
「フッ・・・・・まったく・・・・・・ないな」
途切れ途切れに高橋さんの声が聞こえていたが、その後、目を閉じたままだったが唇に柔らかなものが触れた感触がした。
エッ・・・・・・。
もしかして・・・・・・高橋さんに、キスをされてる?
そう感じられたが、直ぐにその感触は薄れて感じられなくなってしまった。
今のは、錯覚?
「高橋・・・・・・さん」
「ん?」
あっ! 
錯覚じゃない。
静かに目を開けると、まだ触れていたいという欲求から無意識に両手を高橋さんの首に回していた。
「お前。俺を誘ってるのか?」
ハッ!
「そ、そんなことないです。ち、違いますから」
慌てて廻していた両手を高橋さんの首から離すと、その離した両手を高橋さんに掴まれ、ベッドに押しつけられてしまった。
「隙だらけ」
高橋さん・・・・・・。
「酔って、男を誘うようなことはするな」
そんな・・・・・・。
「それに・・・・・・」
エッ・・・・・・。