新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜

「そのベーコンは、どうするんですか?」
「ん? カリカリに焼いて、刻んでシーザーサラダにトッピング?」
シーザーサラダ。何て、お洒落なことを。
せっかく頑張って夕食を作りたかったのに、高橋さん主導で言われたとおりに動いていて、まるでアシスタントのようだった。
もう。仕事でもアシスタントなのに、キッチンでもアシスタントなんて。
食事の準備が出来て、テーブルに並べていると高橋さんもキッチンから出て来た。
「さあ、食べよう」
「はい」
「ああ。ちょっと、待って」
座りかけた高橋さんがキッチンに入っていくと、冷蔵庫を開ける音がして間もなくワインとグラスを持って戻ってきた。
「お前も、少し飲むか?」
「はい。いいんですか?」
「少しだけだぞ」
「はい」
手渡されたグラスを持つと、高橋さんが白ワインを注いでくれた。
「あっ。私が・・・・・・」
「大丈夫だ」
高橋さんは自分でワインをグラスに注ぐと、グラスを私の方に向けた。
「お疲れ様」
「お疲れ様でした」
一口ワインを口に含むと、口の中で優しく味が広がった。
「美味しい」
「そうか。それなら良かった」
ワインを飲みながら、高橋さんと作った食事を2人だけで堪能出来るなんて。何て、贅沢なんだろう。食事も美味しいしワインも美味しくて、そこに高橋さんが居て・・・・・・。
「空いちゃったか」