新そよ風に乗って ⑤ 〜慈愛〜

「な、何だか、凄く授業内容が濃いですよね」
常に、世界情勢を把握していなければいけないなんて・・・・・・。
「確かにそうだな。それは、ヨーロッパ諸国の大学でも同じような授業が取り入れられているしな」
そうなんだ。こっちの大学は、本当に勉強をする場所なんだ。当たり前だけど。
「日本は島国で、雇用制度も確立されているが、他の国は千差万別。勿論、失業率が高い国が日本より多いが、場合によっては人員不足で、他国からも採用しないと成り立たない職種もある。例えば、ドイツでは介護福祉士が不足していて、それに伴って人員不足による慢性的な介護福祉士1人あたりの負担が大きい。それは、日本でも職種によっては同じことが言えるんだが、最大の違いはドイツはその1人あたりの負担から来る介護福祉士の離職率を減らすために、中国から介護福祉士を雇用する制度を近いうちに設けることを決定した。他国から雇用することは、かなり大変なことは一目瞭然だ。無論、そこまで辿り着くには言葉の壁も勿論あるが、それ以上に介護福祉士の資格を取得する制度が根本的に違うので、その問題を解決するために何度も中国に出向いて交渉を重ねて確立させたらしい。自国の制度とは異なる部分も多いはずだから、とてつもなく大変だったと思う。だが、それも他国と制度が違うこと等を培ってきていたから想定できて、交渉を重ねられたんだと思う。その国によって、異なることは当然だからな。それも、世界に目を向けてその仕事に携わってきた人達が取り組んできた結果なんだと思う。」
世界に向けてその仕事に携わる。凄いな。
高橋さんが説明してくれている内容は、とてもグローバルな話で興味深かった。
「でも、だからといって日本が駄目だとは俺は思わないし、思ってもいない。ただ、そういう視野を広めることは自分にとっても、国にとってもとても大切だとは思う。日本は平和で豊かな国というのが、自分達もそう思うし他国から見ても殆どの国からそう見られている。だが、その平和は何を礎に成り立っているのか。当たり前のように暮らしている毎日だが、この当たり前の生活を続けるためには、何が必要なのか。そのことを1人1人が考えないといけないと思う。日本人が海外に行った途端、荷物を盗まれたという話をよく聞くが、それはそれだけ海外の国々の治安が日本より悪く、生活に困窮している人が多いからだという証でもある。俗に言う、平和惚けをしている日本人がターゲットになってしまうのはそういうことが前提としてあるように、日本は平和な国だという印象を逆手に取られているわけでもあるんだ。だからこそ、自分のためにも世界を知ることは必要だと思う。こっちの大学の教授が、世界を知るというのは世界の文化や経済を知ることと同時に、もっと自分の国を知ることが出来る意味もあると授業で話していたのが今でもとても印象に残ってる」
世界を知ることは、もっと自分の国を知ることが出来る意味もある。