人の声のざわめきと一緒に鳴ったチャイムで机に突っ伏していた頭をなんとか上げる。
私は目をこすりながら、チラリと壁にかけてある時計を見やる。
どうやら3時間目が終わった後の休み時間だ。
かなり居眠りをしていたみたい。
もう少し寝てようかな……。眠いし。
「唯純ー……」
誰かが私の名前を呼んでる気がするけど、
もう少しだけ寝かせて欲しいよ。
そう思って私が突っ伏しようとしたとき、
「唯純!!」
耳元で名前を呼ばれ、バッと頭を上げて反射的に起きると目の前に立っていた幼なじみの春日(はるか)がち呆れたような顔をしていた。
「いつまで寝てるの?もう3時間目の休み時間だよ?」
口調がいつになく荒いよ。
私は「ふぁぁ……」とあくびをしなががら言った。
「…昨夜さ、明里が風邪こじらせちゃって、看病しててちょっと寝不足気味でねー…」
明里は4歳年下の弟のことで、小さい時から身体が弱くて風邪をこじらせやすいんだ。
「えぇ!?明里くん大丈夫なのっ?」
すると、眉尻を下げて心配な表情をして言う春日。
ほんと、コロコロ表情変わるなあ。喜怒哀楽が激しいというか。
「そんな、心配しなくていいのに、大丈夫だよ。すぐ元気になるんだから」
小さい頃から明里を可愛がってくれたから一人っ子の春日にとって明里は弟みたいな存在なんだろうな。
というか、前に春日から聞いた気がするけど。
「寝不足気味だからって居眠りばっかりしないでよ?次の授業、数学の原先生だからね」
あ、そっか。次の授業数学か。
「はーい」
軽めな返事をすると「もう…」と言いながら、不服な顔をした春日は、休み時間の終わりのチャイムが鳴ると同時に自分の席に戻って行った。
……次、数学かぁ…。
そう思っていると、教室に数学の原先生が入って来た。
20代後半の長身の男の先生だけど、居眠りしている生徒にはすごく厳しくて私も目をつけられている。
だってすごく眠気誘う声してるもん。
「今日は34ページのここの問題解説からしていくぞー」
授業の号令を終えると、原先生の問題の解説がさっそく始まったけど、睡魔に負けた私は居眠りを続けてしまった。
「…本」
「中本!!」
「…はいっ」
原先生に指名されたから焦って返事をして席を立った。
「お前、最近居眠り多いんじゃないか?数学の勉強でもしてんのか?」
呆れたような口調でじっと私を見ている原先生。
チラッと視線を右斜め前に座ってる春日に向けると、あちゃあ…だから言ったのに……という顔をしている。
「お前この問題解いてみろ。これくらいわかるだろ」
「っ…」
ノートを持つ手に力が入る。
……どうしよう。何この問題。応用中の応用すぎて分からない。
「分からないのか!?この問題前回やった所だぞ!?」
ものすごい剣幕で怒鳴る先生。
思わずひゅっと喉が鳴ってしまった。つい、あの日を思い出しそうだ。
「あの、先生……」と春日が言いかけた時、
「答えは2√3」