「…ね、わた……こう!」


下の階のリビングから、話し声が聞こえてくる。


私──絢瀬 るかは、カーテンを遮っても差し込んでくる光で目を覚ました。

相変わらず家の中に響く、大きな話し声と笑い声。


様子を見にいくためにドアを開け、こっそりと下の階を見る。

うちは吹き抜けになっているから、何をしていてもリビングにいれば筒抜け。

そこには、よく物語のなかに存在するような──そう、まるで理想的な家族のカタチがあった。


美人で優しいお母さんと、

かっこよくて何でもできるお父さんと、

可愛くて癒やしの存在の娘。

その中でも特段際立っているのが、主人公である娘。


私の妹──咲那(さな)。

テーブルに乗った色鮮やかな朝食を、上品に微笑みながら食べている。

着ているのは、私と同じ、紺のブレザーにチェックのスカート、赤色のリボン。


同じデザインのものを身に纏っているはずなのに、咲那が着るとどうも違う。


「…あ、お姉ちゃん」


何も言えずその場に立ち尽くしていると、突然上を向いた咲那が私を見つけた。

っ、あ…。


やばい、怒られる…。


その声で、気がついたお母さんやお父さんもこっちを凝視してきて。


「そんなに見つめないでよ?まるで私たちが──」



虐めてる、みたいじゃない?



そう言って、勝ち誇ったような微笑を浮かべる咲那。

それに同調するように、お母さんもお父さんも、笑いながら貶してくる。


やめて、




おねがいだから─────。