一人で本を読んでいた。この世界、"レスタジア"の創造と物事の在り方について。

 レスペクティブ・ファンタジア、通称レスタジア。世界最大級の魔法王国。

 一見難しそうな内容に思えるが、読み始めればそれはただの偏見だということに気づき、終わる。
 
 この本の内容は、この世界は他の世界と隔離されたところに存在する、ということ。

 他の世界には獣人族、という種族はいないし、魔法もないらしい。その代わりに科学や医学、近代化が進んでいる、とのこと。
 
 今まで知らなかった、普通だと思っていたことが、こうして本を読めば、すぐに解決する。
 
 本は偉大だ。だからあたしは、休み時間、こうやって一人で本を読んでいることが多い。友達がいないから、という理由もあるが、特にすることもないので黙々とページを捲り続ける。
 
 本の世界に浸っていれば、辛いことも悲しいことも、全部忘れられる。今までずっとそうやって過ごしてきた。

 だが、平和そうなこの王国には、大きな問題があった。

 人種差別、族間の紛争、犯罪や貴重な動植物の消滅など。

 そう、人種差別。

 レスタジアには、「獣人族」と「劣人族」という大きく2つに分けられる種族が住んでいる。劣人族とは所謂、普通の人間のこと。獣人族よりも劣っている部分が多いため、そう呼ばれている。割合としては7:3くらいだろう。社会的に差別の対象になっている。

 ただ、もし獣人族と劣人族が結婚してしまったら。

 その両親、子供が獣人族だったとしても共に差別の対象、簡単に言えばいじめに発展することは避けられないだろう。

 そして、その子供が獣人族、劣人族のどちらの特徴をも持っていた場合、あまり確率は高くないものの実際に確認されているので存在はしているのだろうが、まず殆ど出生直後に殺されてしまうだろう。

 この国はまだ発展途上国。科学や医療はそこまで発展していない。病院もあまり多くはないため、精密機器での検査などは大金を取られるのだろう、最近は家で出産するケースがほとんどだ。

 そして本題に戻ろう、今まで傍観者視点で物事を眺めていた、魔法学校に通っているこの少女は、獣人族と劣人族のハーフであった。

 そして、親や同級生たちにいじめられ続けてきた身であった。

 悲しきかな、もう彼女には感情はなかった。

 今日も教室で1人、本を読んで過ごしている。