もうかれこれ数時間、もしかしたらもっと短いかもしれないし、長いかもしれない。あたしの体内時計はあてにはできない。
けれどひたすら、道なき道を走り抜けている。


行けども行けども、前後左右似たような景色が広がっている。


今、向かう方向が正しいのかさえもわからない。

それでもあたしは走らなければならなかった。
例え、力尽きようとも倒れるわけにはいかなかった。


腕を振り回し、木を枝を草を掻き分けていくけれど、前を阻む枝が右頬を打つ。

ぴりりと痛みが走って、片目をつぶった。
頬を触れた指先は赤く滲んでいた。

傷ができるのはこれが初めてではなかった。


それでも、息を切らして走り抜けるしかあたしには選択肢が残されていなかった。


捕まるわけにはいかなかった。



走っている間に方向感覚はどこかへ行ってしまった。
ただただ足を進めて追うものから逃げるだけ。