昔この山には祟りを抑える祟り神が存在していた。

この神は山の頂上に存在する神社に祀られ、崇拝されている。

しかし人口減少が加速し、少子高齢化していくにつれて神社の存在はがいつしか忘れ去られてしまった。



誰も来ず、手入れもされていなかったことにより、この村では頻繁に洪水などの自然災害が起きていた。

稲作ができないのもしょっちゅで、たとえ出来たとしても豊作の日は少ない。



人々は困り果て、祟り神のせいだと思い神社の復興を目指した。

しかし復興する過程で、何人もの人々は食料不足に陥って飢えで死んでしまった。

これは祟りの一種かもしれない。

そう考えた人々は神社を復興することもできなくなった。



ただ人々が死んでからおかしなことが発生。

なんと捨てられた死体から一本の芽を生やしたのだ。

その芽は徐々に大きくなっていき、紅葉の木に成長していった。

この木々は秋に赤い色の葉っぱとなって枯れていく。



まるで人間の死のように、成長を終えた葉は地面に落ちてまた芽を生やす。

それを繰り返して、自然を循環させていく。






「そうそう。これこれ」



あの事件が起きてから六年が経過した。

最近話題になっているのは、二本の幹に分かれた紅葉の木だ。

二本に折り重なった様子は求愛しているようにも見える。


「おい!こんなものがあるぞ!」


木の根元を一人の男が探ると、ボロボロに崩れた色褪せたワンピースと一枚の写真が出てきた。

写真の方は原型をとどめていないのでわかりにくいものの、男女が写っているのはなんとなく理解できた。



これは秋と慎司の写真なのか。

どっちにしろ復元しないと分からないのは事実。






「赤紫山」……この山には沢山の種類の木が植えられている。

霊感の強い人には赤い空と紫色の木々にしか見えないと言われている。

つまりこの山は人が木々になるという呪いが積み重なっていたのだった。

だから、今後誰も近づくことはないだろう。

もし近づけば……。



怖くなるのでこれ以上言わないでおく。