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「由愛――!! 学校行こう!」

千波の元気な声がする。

まったく、朝はハイテンションなんだから、千波……。

私は口の中いっぱいのカフェオレを無理矢理飲み、口周りをティッシュで拭いて鞄を持った。

「じゃね~!」

私が暢気に言うと、お母さんは笑いながら言う。

「『じゃね』、じゃなくて『行って来ます』でしょ! いってらっしゃい」

私は笑い返し、扉を元気よく閉めて家を出た。

カチューシャをした、おなじみの千波。

千波と私は幼馴染で、家も隣。

親同士も仲が良くて、小さい頃からずーっと一緒。

まるで双子みたいだった。

「由愛、今日は数学があるね! 由愛の大嫌いな数学」

千波がからかうかのように言う。

ああそうですよ、私は数学なんて大嫌いだ。

数学の先生の丸山は、授業中いつも唸る様な声で問題の解き方をベラベラと喋り、最後にはいつもお決まりのセリフ、

「今日学んだ事を、家で復習しておきましょう!」

と言うのだった。

その台詞は置いといて、あの唸るような声はやめてほしい。

確かに、ド田舎の中学生達にくだらん物を教えるのはつまらないだろう。

だけど、こっちは金払って教えてもらってるんだ、少しは生徒達が分かるように工夫しろ!

そんなこんなで、色んな事にグチをいいながらも、私は幸せだった。

ずっと、この生活が続くんだって思ってた。



































でも、それは間違いだった。