やっぱりこんなを病気抱えて、高校生活を送るなんて無理だったのかな。
何でわたし、こうなっちゃったんだろ。
それもこれも、全部わたしが悪い。のかな……。
日奈子は寝返りを打って、仰向けから横向きへと体位を変えた。寝返りを打ったのは、あふれそうになった涙を隠したかったから。
頭まで布団を被れば、微かな声なら漏れない。
あの事件に遭って以来、お父さんにもお母さんにも迷惑をかけた。
特にお母さんにはたくさん心配かけたと思う。
心と体の傷が癒えるまで、学校へは行かなくていいよと言ってくれたし、事件について学校や教育委員会に掛け合ってくれた。
療養後引きこもり状態だったわたしが高校に行きたいと言い出した時、お母さんの表情が複雑そうだったのは、今でも覚えている。
高校へ行ったら、わたしが皆と同じ青春を楽しめる。
だけど、まだ男性教師への恐怖心も残っているのに……。
そんなお母さんを説得してくれたのは、隣の家に住む同い年の琥珀だった。
わたしが日奈子と同じ高校に行けば、日奈子を助けてあげられる。わたしが日奈子の騎士になるよ!
琥珀は、わたしの両親にそう伝えてくれた。
中学三年の時の担任の先生は、こんな不登校の生徒に対し、優しく接してくれた。
保健室登校も許してくれたし、高校入試に向けた対策も考えてくれた。
内申点も、二年の時のものは極めて低評価だっただろうに、一年の時のと合わせて高校へ入学できるくらいまで上げてくれた。
遊馬くんだって。
不登校だっていうことは彼には内緒だったけど、メッセージで数学の勉強を手伝ってくれた。
遊馬くんが丁寧に教えてくれたおかげで、一年間分の遅れを取り戻すことができた。
両親にも琥珀にも、元担任の先生にも、遊馬くんにも。
たくさんの人に支えてもらってここにいるのに、わたしは……。
不甲斐なくて不甲斐なくて、日奈子はぎゅうっと目を瞑った。
こんなんじゃ土曜日、遊馬くんと会う約束も、絶対に無理だ。
そもそもあの、下校時に逃げてしまって以来、メッセージに返信もできてないんだから。
いつの間にか寝てしまったのか。本鈴が日奈子の目を覚まさせた。
眠ったというよりも、気絶に近いのかもしれない。そう思いながら、日奈子はゆっくりと体を起こした。
終鈴がなったということは、もう少しで琥珀が迎えにくる。
少しだけ気持ちも落ち着いたし、出られる授業はちゃんと出なきゃと、ベッドから出ようと体をずらしたその時、保健室のドアがノックされた。
琥珀かな。
そう思う間もなく、予測は外れたことを知る。