麻衣ロード、そのイカレた軌跡❺/二つの情念、炎上す

その13
リエ



私は目が点になってた

さっきまで私の顔の表面にあった”薄笑い”は、数秒で跡形もなく消え去っちゃったわ

みんなも固まってるし…

真樹子さんや祥子、それに久美まで

豹子の口から出たターゲットの”名”を聞いて、一同は心の中で同じ言葉を呟いたに違いない

”冗談でしょ?”って…

「麻衣さん!それって…」

私の左隣にいる真樹子さんは前のめりになって、豹子にそう問いかけたわ

「麻衣、”そこ”に狙いを定める理由、聞かせてもらおう」

祥子のこの問いも、ここにいる全員の思いを代弁していた

「フフフ…」

豹子は何とも怪しい笑顔のあと、”理由”をみんなに述べたわ


...



麻衣の説明はおよそ5分弱ってとこだったかな…

「麻衣さん、狙いどころはなるほどだけどさ、実際は難しいんじゃない?”これ”って、その前提で向こうが割れることを誘引しないと、終わった後の実りが得られないでしょ?」

「真樹子さん、今度のは今までと違うわ。強行突破でやるしかない訳だし、もう力づくよ。何も難しく考えることないでしょ。そういうことよね、豹子?」

「ああ、リエの言うとおりさ。真樹子さん…、それ故、この段階に及んでは外部集団の取り込みがさ、すべてのカギを握ることになるのよ。そこで、今後の外部戦力取り込みの現状について、みんなに話してやってよ」

「うん、そうね。なら、”それ”は私から…」


...


さあ、ここからは私にとって直接の持ち場となる、外部戦力アップの戦略にかかわるわ

真樹子さんはウーロン茶をごくっと飲んでから、話を始めた

「…まず、墨東会系列下の私が直轄してる赤部隊は現時点で12人。さらに墨東の枠外が、3グループプラス個人で合計14人。他、フリーで折衝可能なのが、まあ…、これは使える奴ばかりじゃないけど約20人ってとこよ」

さすが女忍者、真樹子さんだ!

墨東会の”縛り”から外せる頭数を、ここまで集めているとはね…

戦力外のカスは私と祥子がふるいにかければいい話だし、とにかく数よ、今は…

「…次に、来週にも紅組から脱退するであろうグループだけど…。4人衆幹部全員と他に6人と見て間違いないわ。紅組の約半数ね。この人たちは表面上は当面フリーということになる。で、彼女ら独自であと4,5人、加えて私経由で3人の加入が見込めそうよ。これは、そのまま我らの陣営に準ずると踏んでる」

ふー、紅組は創立幹部の4人衆がそっくり離脱ってことね

耳にはしてたけど、まさかそのまんまとは…、驚いたわ

まして、その勢力とは真樹子さんが接着剤になって、既に提携路線が敷かれてるのね

これは大きいわ、うん、いい…