18×3/5/×× 曇り
「キレイな満月だね。
まるで世界の僕らにだけ
スポットライトが当たっているみたいだ。」
事件の後から沈んでいた奏大くんも
開放感と期待から今日はよく喋るみたいだ。
そんな奏大くんをからかう宏樹も
それを微笑ましく見ている誠哉くん達も
ちょっと前の何も知らない僕たちに戻ったみたいで
ここまで来たのに
立ち止まりたい気持ちでいっぱいだった。
「疲れた…。」
「あっ!いいところ発見しましたよ!」
ふざけあって疲れ果てた
奏大くんと宏樹が見つけたのは
古びた車や、土埃を被ったベットだった。
森の中なのに
暖かい雰囲気を纏ったそこは
本で見た秘密基地のようだった。
それよりはるかに
ゲームもジュースも何も無いけど
僕らにとっては素敵な基地で
疲れも忘れてはしゃいでしまった。
「ねね!蓮くん!!
この車、俺にすごく似合ってると思いませんか?
ほら!俺、すごく大人っぽい!」
宏樹が置いてあった車に乗りながら言う。
それを軽くあしらった蓮くんは僕の近くまで来て言った。
「ここ半年くらい皆沈んでいたけど
どうにか元気になったみたいで良かった。
きっとこれからはこんなに
事が上手く運ぶとは思えないから
伊月も今のうちに、休んどきなよ。
ずっと気を張っていても後で倒れちゃうからさ。」
ありがとうございます。
そう言ってベットの方へ行き
土埃を払って腰掛けた。
黒く汚れてしまった手を
見つめながら息を吐く。
これから先どうやって生きていくかを
ぐるぐると考えているうちに
疲れ果てた体は眠ってしまった。
