18×3/5/×× 雨のち曇り
「…宏樹?
宏樹!
起きた?
もう出発の時間だよ?
早くしないと
職員さんたちが起きちゃう!」
目が覚めた時にはあの
なにかに
酔いしれてしまうような雰囲気は
どこかへ行ってしまっていた。
ぼんやりとしてしまった頭を振り
完全に目を覚ます。
今日はこの施設から抜け出す日だ。
着古したパジャマを脱いで
用意した服に着替える。
まだ
抜け出すという実感がわかなかった。
まだ
夢を見ているんじゃないのか
と頬を引っ張るがジンジンと
痛むだけだった。
「なにしてんの宏樹…早く行くよ」
既に用意を終えた奏大に急かされ
部屋を後にする。
もうこの部屋や
大好きなこのクマの人形
沢山遊んだオルガンとも
何もかもと決別する。
「バイバイ、ありがと…」