「こんにちは、クリス様」
「……………あぁ、リーレ嬢も変わらないようで何よりだ」
自身がどう思っていようとも婚約者との交流が避けられるはずもなく、今日も定期的に行われているお茶会に足を運ぶ。
正直なところどういう態度を取ればいいのかと内心戸惑っていたが、婚約者の方は変わらずにいつものようにほのぼのと笑っていたのでこちらの気も楽になった。
和やかに会話を重ねていれば「そういえば、」とにこにこと笑みを浮かべる姿にどうしたのかと言葉を返す。
「今回のお茶菓子はわたしが作ってみたのです。家の者からの評判はよかったのですが、クリス様からも感想を頂けませんか?」
「茶菓子、か………」
「えぇ、こちらです」
内心どんなものが出るのかと戦々恐々としていたが、出されたものは見た目はシンプルなスコーンで生クリームや砂糖の塊やらがどっさり乗っているものではなかったので胸を下ろす。これなら、まぁ食べられるな。
中に何か入っているようだがそこまで菓子に詳しくないし興味もなかったのでぱっと見ではわからない。
…………ここは婚約者としては味の感想を言うべきだろう。が、正直なところ甘いものはもう遠慮したい。そうも言ってられないのもわかっているが。
「ちなみに中に入っているのはベーコンですわ」
「…………………ベーコン?」
「はい。あ、チーズも入ってますね」
「……………………………チーズ?」
「はい」
…………………それは普通、茶菓子には入れないんじゃないだろうか。



