そしてあの日も婚約者であるリーレとのお茶会で、以前に口にしたことのあるお菓子を勧められて無意識のうちに頬が引き攣ってしまった。最近の流行りだとかでスポンジに甘いクリームが挟んであり、その上からさらに砂糖がふりかけてあるような凶悪に甘いものだ。もう一生出会いたくはなかったがそれも難しかったらしい。



「どうかされました?」


「……………君たちはよくこんなものを食べられるな」



自分が思っていた以上に鬱憤が溜まっていたのかものすごく低い声が出た。我ながら怨嗟すら籠っていそうな声音だった。いつもなら笑顔で受け取ることができたはずなのに流せなかったのは今までもこれからもこれが続くのかと心底うんざりしたからだ。


いつの間にか笑顔を作るのも忘れてしまい、しまったと思った時にはもう遅かった。


子どもらしい丸い瞳を更に丸くしてきょとんとしている婚約者にもう遅いかと思いながらも取り繕うように笑みを向けてその日のお茶会は終わった。


……本当に、自分らしくない失態だった。伯爵家の人間として、貴族として自分を律してきたというのにこの程度のことで揺らいでしまうなんて不甲斐ない。