それはなんて幸運なことなんだろう。
当然のように個人を見て、その人に対して気遣える、素朴で、でもとても大切な、人を思いやれる優しい心を持った自分の婚約者。
この時から単なる義務だったお茶会は婚約者のことを知るための時間となり、なんの感慨も持っていなかった婚約者は私にとって特別な存在になった。
そして知れば知るほどに自分の婚約者が貴族社会ではとても稀有な存在であり、男女に関わらずその魅力に気付いた者を意図せずに魅了していったことに思わず頭を抱えることとなった。
いや、ある意味では私の自覚を促すという点で良かったのかもしれないが。初めの頃は婚約者という意味で特別な存在ではあったがそれがいつの頃からか変化していき異性として惹かれていった。
しかし素直に彼女に惹かれていることを認めることができずに一時期は気まずい空気となってしまったが、その間になんの不幸か彼女に近づく輩が出てきて慌てふためきながらその対処をしているうちに早々に陥落した。



