妖目の恋煩い〜猫と宴と…

「今日も遅くなるから、大人しくしててね」


「………」


朝食が終わった後、自分の部屋に戻されて焔さんは私にやんわりと注意を向ける。


「あの…せめてお屋敷の中だけでも自由に歩いちゃだめなんですか?」


「ダメ」


即答で答えられてしまった。


「でも、じっとしていると体に良くない気が」


「んー確かにね。そうだよね…」


そう言うと焔さんは少し困った表情で目を細めた。


と、私の近くに来て目線を合わせる。


「もう少しだけ待ってね。今の君には難しいからごめんね」


「………はい」


焔さんがそう言ってくれるなら、もう少し我慢するしかないのか。



「じゃあね、いい子にしててね」


そう言っていつものように頭を撫でられる。


「………」


(やっぱり子供扱いされている気がする)


「!」


そして同時に焔さんは顔を近付けてきて。


「ちょっ…ちょっと!」


さすがに毎回毎回どこかしらキスされるのはどうにも困る。


なので、手のひらで焔さんの口元を静止させた。


「!?」


だけど、手のひらに焔さんの唇の感触を感じて、ビクッとなる。


「ほっ焔さんっ」


ばッと手を引っ込めて焔さんを睨みつけた。


「………拒否しちゃだめだよ」


くすっと笑う彼の顔は、どこかからかわれているような気がした。


「っっ〜」


結局、顔を近付けられてそのまま頬に唇が触れた。


「………っ」


睨んでも効果がない事は分かっていても、焔さんに振り回されている事に納得できないでいる。



「俺の奴隷なんだから、拒否権があるとは思わないで」


「!」


(奴隷………)


「じゃあね、行ってきます」


「………」


そのまま焔さんは部屋を出ていった。


奴隷の言葉に私は何も返せなかった。


「私は…奴隷なんだよね」


だからあの人が何をしようが拒否できないんだ。