妖目の恋煩い〜猫と宴と…

「んん……ん…」


ぼーっとしながら目が覚める。


(ああ、そうか…もう朝)


そう思いながら寝返り打ち横を向く。


「!?」


横を向いて目に入ってきたのは、着替えの最中の焔さんだった。


幸いにまだ上半身裸だったけど、それでもやはり目のやり場に困る。


(っ)


思わず枕に顔を埋めて寝たふりをした。


ていうか、ここ焔さんの部屋だ。


思いっきりぐっすり眠ってしまったんだ。


(男の人の部屋で寝るなんて…)


「おはよう、唯架ちゃん。何やっての?
寝てるふり?」


起きている私に気付いたのか、そのまま頭の辺りに座り込む。


「!」


(……)


「っ」


顔を上げるとすぐ近くに焔さんがいてビクッとなる。


「あの…服を着てください…」


「着てるよ?」


「どこがっ…上を着てください」


「んーはあ」


その溜息はどういう意味の溜息?


「しょうがないな〜」


「えっ」


そう言ってベットから立ち上がり離れていく。


「はあ」



なんだかずっと焔さんに振り回されている気がする。


体を起こしてベットに座り込む。


「!」


焔さんは上の服をちゃんと着てから、また私に近付いてきた。


「そういや、挨拶返して貰ってない気がする」


「えっ」


「おはよう」


「お、おはようございます」


「うん」


まあ、確かに挨拶は大事だ。


大事なんだけど…なんでこんなに近寄って来るのだろう。


「あ、あの…っ」


焔さんはそのまま片膝をベットに置いて近付いて来ては頬に手を添えられる。


「ちょっ…ちょっと…!?」


そして額に焔さんの口が触れる。


「ちょっとー!!」


「ん…完了」


(何が? ていうかまたちゅーされた!)


思わず額を両手で抑えて焔さんを睨みつける。


「なんで、こんな事ばかりするんですか!」


「えーうーん。したいから?」


「……あ」


しれっと爆弾発言と取れるかのような一言を発した。


「最悪…」


「えっなんで?」


「なんででもっ」


(もう、いや。この人…)