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「あー、美味しかった! ご馳走様。 またしばらく忙しいけど、なるべく早く帰るようにするから。 凛も戸締りとか気をつけてね」

「うん。 わかってる。 ありがとう彩人くん。 大学院、頑張ってね」

 彩人くんと笑顔で手を振り合って、バタンとドアが閉まった。



「……」



 そして、殺気。

 背後から、殺気。

 ゆっくりと振り返る。

 奥の部屋からリビングにつながる廊下の入口で、姿勢正しく座るアメリカンショートヘアーの猫ちゃん。

 ビターン!ビターン!と床に打ち付けられるは、モフモフの尻尾。

 ゴゴゴ、と怒りのオーラをまとった猫ちゃんが、目を細めて私を睨んでいる。

 やっぱり美猫だ、なんて呑気なことを考えちゃうのは、夏宮くんの猫の姿をちゃんと見るのが久しぶりだったからかもしれない。

「……」

 あっ、やばい。

 こうして見つめあってる間にも夏宮くんの尻尾のビターン!が激しさを増している。

「今すぐ作ります!鬼早で!」

 ビシッと敬礼をしてキッチンへ急ごうと夏宮くんの前を横切ったとき、

 ボフン!

「キャッ⁉」

 飛びついた夏宮くんにのしかかられた。

 ドサッ。

 その勢いのままソファに押し倒される。