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 しばらくして宿題をなんとか終え、私はキッチンに目を向けた。

 カチャカチャと手際よく何かを作ってくれる彩人くんの背中がある。


 ……夏宮くんの予想は、的中してる。

 彩人くんは、私の初恋の人だ。


 7個上の彩人くんはいつも優しくて、温厚で、大人でかっこよくて。

 物心ついたころにはもう大好きな人だった。

 小さい頃、大きくなったら彩人くんと結婚する!ぐらいは余裕で言っていたし、高校生の彩人くんが彼女を連れて歩く姿を目撃した夜には、自分の部屋で電気もつけずに泣いた。

 それでも、成長とともにその恋心はなくなっていった。


「……あれ? 彩人くん、その服裏表逆じゃない?」

「え? あ、ほんとだ」

 彩人くんのうなじのところにタグがペロンと垂れ下がっている。

「まぁいっか」

 彩人くんがヘラッと笑った。

「……フフッ」

 相変わらずのおっちょこちょいな彩人くんに、思わず笑いが込み上げる。

「彩人くんって、私以上のおっちょこちょいだよね」

「えぇ? 凛には負けるよ」

「いやいや、彩人くんには勝てないよ」

「いやいや」

「いやいやいやいや」

 二人で否定しあって、笑い合う。

「……ん。腕汚れてる」

「え?」

「おいで。拭いてあげる」