飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。

「あっ、そっ、それっ、それね、それはーえっとーえっとー……」


 ……どうしよう。


「……フフ」


 何ひとつ言い訳が、思いつかない。


「あははははー!」


 本当に何にも思いつかなくて、笑ってごまかす作戦にした。


「?」


 彩人くんは頭にはてなマークを浮かべながらも、まんまと釣られてニコニコし始めた。


「あははは……フフッ……あ!そういえば彩人くん、昔おばあちゃんにトマトの切り方が下手!って怒られてたよね⁉」


 適当な話題で強制的に軌道修正を試みる私。


「え⁉ なんでそんなこと覚えてんの!?」

 
 それにまんまと乗っかってしまう、彩人くん。


「あのときの彩人くんとおばあちゃんの喧嘩凄かったから、覚えてるの!」

「あのとき凛、小二とかだよね? やだなー忘れてよ」

「あはは」

「僕もあのとき反抗期だったからイライラしてたんだよなー。今にして思えば反抗期VS更年期だったんだよね」


 彩人くんは懐かしむように言ってキッチンへと向かった。