「それ借りてもいい?」


 夏宮くんがそう言ってネックレスを指さしたので、私は涙目でこくりと頷いて、ネックレスを乗せた手を差し出した。

 それをそっと掬い上げた夏宮くんは、小さなリングを丁寧につまんでペンチをあてがう。

 ……夏宮くんが、真剣だ。

 さっきまでヘラヘラチャラチャラしてたのに。


 私は夏宮くんが集中して作業してくれるのを邪魔しないように、膝を抱えて大人しく見学することにする。


 ……大事そうにさわってくれるんだな。

 やっぱり横顔がかっこいいな。

 ずっと飽きずに見てられそう。

 わたし、夏宮くんが何かに集中してる顔……好きかも。

 

「……うん。できた」


 不意打ちで夏宮くんが緊張を解いて顔をあげたので、なぜか悪いことをしてたような気持ちになって、二重の意味でドキッとする。


「はい。どーぞ」


 夏宮くんは私に向き直ってネックレスを差し出した。


「……ありがとう」


 小さくお礼を言って受け取った私に「うん」とだけ言った夏宮くんの笑顔が優しくて、あったかくて。

 鎖骨のあたりがじわり、くすぐったくなった。