「……それは大事だね」


 夏宮くんがポツリと言った。


「うん……何よりも、大事」

 
 ネックレスチェーンは留め具の付け根にあるリングが緩くなってしまってたみたいだ。

 つけても簡単に取り外せてしまう状態。

 このままではまた落としてしまいそうだ。

 夏宮くんの視線を感じた私は、情けなくなって自嘲気味に笑う。


「そんな大事なら、しまっておけよって話なんだけどね」


 私はこのネックレスを肌身離さず持ってる。

 これが私の精神安定剤になってるなんて、他の人にはきっと理解できないだろうな。
 
 もっとちゃんとしたチェーン、買わなくちゃ。


「……ちょっと見せて」


 夏宮くんがネックレスを持つ私の手をそっと引いて、まじまじと見る。


「……?」

「ペンチとか、ある?」

「ペンチ?」

「小さいやつ。リングの隙間詰めればまだ使えるんじゃない?」

「……!確かに!」