吹き飛ばされてもまるで怯む気配のない猫に、男の人が逃げ出した。


「あっ!?待ってください!夏宮くんは、」

「知らねぇよそんな奴‼やべぇ、変な病気貰ったらどうしよう‼病院‼」

「え⁉」

 
 そして男の人は猫に追いかけられながら、何の説明をすることもなく、遠くに走って行って見えなくなってしまった。


「し……知らねぇって……」


 もしかして、騙された?

 私は男の人に連れてかれようとしていたビルを見上げる。


「……夏宮くん?」

「ナァーン」

「!」


 いつの間にか、さっき男の人を追いかけていったはずの猫がそこにいた。


「え……」


 猫はいい子にお座りをして、真ん丸のかわいい目で私を見上げている。