「ねー知ってる?失踪した八木澤さんの噂」

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 ちょうど聞こえてきた女の子たちのヒソヒソ話が気になって、私はそちらに意識を向ける。


「あー知ってるー。やばい薬やってたとか」

「そういうことやる子だと思わなかったよね!びっくり~」



 ――私が猫になった、あの日。

 学校に戻ると紗英の姿はなく、私の机には体を元に戻す薬が置いてあった。

 そのまま紗英は、行方不明になった。


 行方不明者届を警察に提出したものの、紗英の捜索は難航していて、唯一の手掛かりは学校の裏庭で見つかった紗英の制服と、注射器。

 注射器から検出された薬物は、私に打たれたものと同じだったそうだ。
 

 不意に窓の外、校庭の奥にある草むらの影に、猫の姿が見えた。