「……ごめんな」

 
 心がポツリと言った。

 着替え終えた私は、反射的に心の背中を見る。

 心の茶色がかった髪が夕日に透けて、サラサラと揺れた。


「凛と暮らし始めた時から、決めてたことだった。凛の家を出たら紗英と付き合うって」


 心の声には、たくさんの後悔が混ざって聞こえる。


「凛のことを守りたかった。自分の気持ちをごまかせば守れると思ってたんだ、本気で」


 私は小さく、うん、と頷く。


「でもダメだった。中途半端で全然ダメで、結果的に凛も紗英も傷つけただけだった」


 きっと心は、


「ごめんね」


 私が想像するよりたくさん、ずっと、悩んできたんだ。


「……違うよ」


 それを分かってあげられていなかった自分が、悔しい。