飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。

「ニャー……!」


 心は私の鳴き声にもう振り向くことはなく、歩き始めてしまう。
 
 おじさんは私を連れてとうとう自転車に乗り込むと、籠の中にあった大きめの魚臭い鞄の中に押し込めて、ジジ……と固そうなチャックを閉めていく。


「ニャー!ニャー!ンニャーオ!」

「うるせーな、静かにしろ!」


 最後の抵抗もむなしく、チャックは完全に閉められて光を閉ざしてしまった。


 ……あぁ

 終わった


 ガタン、と揺れて、自転車が走り出した。


 私は全てを諦め、全身の力を抜いて目を閉じた。


 私、このまま保健所に連れてかれて、何日かしたら……死んじゃう?

 まさかこんな形で最期を迎えることになるなんて、思いもしなかった。


 目にじんわり、涙が滲む。


 ……おばあちゃん。

 猫の姿でそっちに行っても、気付いてくれる?

 大事に育ててくれたのに、こんなダメな孫で……ごめん。