飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。

 心が私から目を離さないまま響に聞く。


「……なぁ、あれは?」

「あぁ、さっき抱っこさせてもらったけど違った」

「……そっか」


「ッニャー!ニャー!」


 おじさんの胸を押しながら、必死に心の目を見て訴える。


「ニャー……!」


 心

 お願い


「ニャァ、ニャー……!」
 
「心?行こう」

「……うん」


 響に促されて心は体の向きを変えたけど、視線はまだ私にとどめている。


「ニャー!ニャー!」


 心

 待って、心

 言いたいことがあるの

 ごめんねとか、ありがとうとか

 言えてないこと、ほかにもたくさん

 たくさん、たくさんあるの

 お願い

 行かないで

 気付いて

 お願い、気付いて……!


「ニャァ、ニャァ、ニャァー……!」


 人間の声が出せたらどんなにいいか。

 これ以上どうしようもない状況に、目からポタポタと涙が零れはじめた。


「……」


 私の必死な訴えも虚しく、心はふいっと顔を背けて、私に背中を向けた。