「この子なんですけど」


 彩人くんはその辺を歩いていたらしいおばさんに、スマホで私の写真を見せている。


「……そうですか……ありがとうございます」


 首を横に振ったおばさんに彩人くんは申し訳なさそうに笑って、名刺を渡した。


「もし見かけたりしたらここにご連絡いただけないでしょうか。よろしくお願いします」


 丁寧に頭を下げると、また別の人に声をかけた。


 彩人くんの必死な表情に、胸が熱くなる。


「ニャァーン!(彩人くん……!)」


 私は彩人くんに駆け寄った。

 
「ゥニャァーン!ニャンニャーォ!ニャンニャンニャー!(わーん彩人くん~!凛だよ!ここにいるよ~!)」


 彩人くんの足に前足をのせてテシテシしながら、必死に訴える。


「ん……?どうしたの?」


 彩人くんは私が何か言おうとしてるのを察知したのか、私の目を見てしゃがんでくれる。


「ニャンニャ!ニャーオニャーオ、ニャンニャーン!(凛です!彩人くん、私はここ!)」

「……?」


 彩人くんは優しい顔で微笑みながら、首を傾げた。


「ミャァ〜(気付いて、彩人くん)」