「ンナァーーーゴ」


 何言ってるのか分かんないけど、とりあえず怒ってるというのは伝わってくる。

 私は使い慣れない四本足で必死に走って、お豆腐屋さんの角を曲がった。

 当然ボス猫さんもその後に続く。

 猫として生きはじめて数時間の私でもわかる。

 これはやばい。

 捕まったら絶対、やばい。

 
「ニャー!ニャー!ニャアァァァン!(ごめんなさい!許してください!私のこと食べないでくださいいぃぃぃ!)」

 
 そしてまっすぐ行った場所に、魚屋さんを見つけた。


「……!」

 そうだ!


 私は陳列棚に跳びのって、今まさに商品取引中の店員さんとお客さんの間に身体をねじ込ませて、鮭の切り身を奪い取った。


「キャッ!」

「あ⁉ こら!」


 店のおじさんにつかまりそうになるのを何とかよけて、咥えた鮭を後ろにポーイと放り投げる。

 それにボス猫さんがまんまと釣られた。

 ひゃー!なんて新鮮そうでおいしそうな鮭!

 魚屋さんごめんなさい!人に戻ったらたくさん買いにきますから〜‼︎

 
 私は鮭を捕まえたボス猫さんがお店の人につかまってるうちに、大急ぎで路地裏へと逃げた。

 しばらくそのまま行って、あまり人気のない静かな住宅街に入る。

 ひとまず逃げ切れたみたい。