「っ……!」


 針と腕の距離、わずか1センチ。

 これを刺されたらもう元に戻れないかもしれないという恐怖に、冷や汗が噴きだして、手が震えた。


「でも……俺は……っ」


 それでも伝えないと。

 本当の俺で、答えないと。


「猫になったって、どんな形にされたって、」

 
 紗英が泣きながら首を横に振った。


「っ、言わないで……っ!」


 紗英。ごめん。

 


「凛が、好きだ……!」



 
 紗英は目を大きく見開いて、糸がプツンと切れたように、その場に崩れ落ちた。


「……」


 紗英の手から落ちた注射器が転がっていく。


「……紗英」


 俺は抜け殻のようになった紗英の前にしゃがんだ。


「凛の居場所、教えて」