飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。

 紗英の手が、ガタガタと震えてる。

 その光景に、初めて紗英と出会った時のことを思い出した。

 紗英の両親が逮捕されて、みんな紗英に近付かなくなって園庭で一人ぼっちで蟻の巣を潰していた紗英に声をかけたのは、俺の方だった。


「嫌だよ」


 俺の冷静な声に紗英がビクッとして動きを止めた。


「猫になるのは嫌」


 言いながら近付くと、紗英が苦しそうに息を荒げながら一歩後ろに下がる。


「でも、大事な人を大事にできないほうが……もっと嫌」


 俺はバカだ。

 なんで今まで、それができなかったんだろう。


「だからいいよ」


 俺は注射器を持つ紗英の手を持った。


「紗英のしたいようにすればいい」

 
 これは、今までの自分が紗英に対して怠ってきたことへの、ツケ。


「は……? なに、言ってるの……わたし、本当にやるよ……⁉」

「うん」


 俺はグッと紗英の腕を引っ張って、自ら注射針に近付いた。