飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。

 うわごとのようにつぶやいた俺に、それまで幸福感でいっぱいだった紗英の顔が、一変、真っ青になる。


「……え?」


 ずっと

 だれも傷つけたくなかった。

 できるだけ、何もせず、誰かの都合のいい存在であることが、一番みんなを傷つけずに済むと思ってた。

 でも……違ったんだ。


「ずっと逃げてて、ごめん」

「……は?なに、急に」


 向き合うことから、必死になることから、ずっと逃げてた。

 ずっと被害者みたいな気持ちでいたけど、違った。

 紗英をここまで追い込んだのは、俺。


「誰も傷つけないようにしてたつもりが、ずっと紗英を傷つけてたんだな」


 何かを悟った紗英が、後ずさって怯えた顔をする。


「……やだ……やだ、」


 紗英が両手で耳を塞ぐのを、俺はそっと掴んでほどく。


「やだやだ無理、無理!聞きたくない‼」

「紗英」

「嫌だってば!」


 紗英は俺の手を勢いよく振りほどいて、スカートのポケットから注射針を取り出して俺に突き付けた。


「っ、一生猫にされたいの⁉」