ピシッ


「痛い!」


 こめかみにデコピンされた。


「え⁉な⁉え⁉」


 まあまあ痛い!

 私はこめかみを押さえて首謀者の響を見上げる。


「あるよ」

 
 そこには無表情で怒る響がいた。


「すごいある。俺は心の親友として、凛に頑張ってもらわないと困る」

「? どうして……?」

「心が本当に好きな人は、紗英じゃないから」


 そう断言した響の目は、まっすぐに私に向かっている。


「っ……どうして、そう思うの……?」


 また期待しそうになって、怖くなって声が震えた。


「私さっき、心に『俺が好きなのは紗英』って、面と向かって言われたんだよ……?」

 
 響は小さく息をついて、「そんなの嘘に決まってんじゃん」と壁に背中を預けて腕を組んだ。
 

「俺はずっと見てきたから。ふとした瞬間、ある人のことを目で追ってる心のこと」


……〝ある人〟?