ズキンと胸が痛くなる。

 顔が曇っちゃいそうになって、必死で口角を吊り上げる。

 心に「ありがとう」と答えた響は、つないだ手をほどいて私の肩を抱き寄せた。


「⁉」


 そして私のこめかみに頬を寄せて言う。 


「今度ダブルデートでもする?」


 教室にそぐわない密着っぷりに、教室中から悲鳴が上がる中、心がニコッと笑った。


「しない」


 即答した心は、口角をあげたまま立ち上がる。

 そして私たちの横をすり抜けて、どこかへ歩き出した。


「心ー!どこ行くのー!」


 まだ騒然とする教室の中を、スタスタと歩いていく心の背中を紗英が追いかけていく。


「……うん。いい感じ」

 二人が教室からいなくなって、響が言った。

「どの辺が……?」

 涙目の私は心の笑顔にライフを削られて、瀕死の状態だ。