飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。

 確かにあのとき、心はずっとキョンに『帰れ』とか、『近すぎ』とか……独占欲を隠そうともせずにずっと苛立っていた。

「私とキョンが付き合うフリするってこと……?」

「そんな感じ」

 ……なるほど。

 それで心の気持ちを探れるなら、やってみる価値はあるのかも。
 
「……でもそれ、キョン、いいの?嫌じゃない?」

「ん?」

「私はそこまでする意味はあるかもしれないけど……キョンからしたらリスクが大きいだけじゃない? 心だけじゃなく、他のみんなにも付き合ってると思われるってことだよね」


 心と紗英の冷やかされ具合を見てると、かなり恥ずかしい思いをしそうだ。
 

「別にいいよ。 月寄となら嫌じゃない」


 キョンは前方を見つめたままさらっと言ってのけた。


「……え」


 不意打ちでちょっとドキッとしてしまった私を、キョンはさてと、と立ち上がって流し見る。


「明日からよろしく。 彼女」


 そう言って、ファンの子たちが卒倒するであろう微笑みを寄越した。