飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。

「……これって……」

「紗英の親は、人間を動物に変化させる薬を研究してた、らしい。それも違法なやり方で。両親とも今もまだ刑務所にいる」

「……」

 つまり……

「紗英は何らかの形でその薬を手に入れて、心に使ったんじゃないかな」

「……嘘」

「嘘みたいな話だけど、心が紗英の彼氏になって学校に戻ってきたのが何よりの証拠」

「え……?ま、待って」

 紗英は自分で心を猫にして、人間に戻したってこと……?なんで?

 いずれにせよ、普通じゃない。

 それまで紗英に抱いていた優しく可憐なイメージが一気に崩れて、訳が分からなくなる。

 それに、心はなんで、

「心は、自分を猫にした紗英と付き合ってるってこと……?」

「そうなるね」

「え……え?」

 考えれば考えるほど、分からなくなっていく。

「心が行方不明になった日、紗英が心を猫にして、心は逃げたんじゃないかな。それで紗英はずっと猫になった心を探してた。こないだ月寄が猫飼ってるって暴露しただろ。もしかしたらあのとき感づいたのかもしれない」


 『凛、猫飼ってるの⁉ 見たーい♡』

 
 ……!


 ようやく私の知ってる紗英と、そうじゃない紗英が同時に存在していることを実感して、ひどい寒気がした。