「僕が一緒に住みます‼」


 叔父の彩人くんが、必死の形相で木魚を取り上げていた。

 大学生の彩人くんは、おばあちゃんの息子、つまりお母さんの年の離れた弟で。

 大学入学と同時に一人暮らしをしていた。

 何度かおばあちゃんと一緒に彩人くんの家に遊びに行ったこともある。

  
「帰りが遅くなることもありますが、一人で暮らすよりずっとマシでしょう?」

 
 名案だと思った。

 彩人くんは優しい優しいお兄ちゃん。

 ちょっと抜けてるところもあるけど、一緒に住んでくれたら安心。


「えぇ、うーん……でも、彩人くんもまだ若いし……」

「母がオーナーをしてたマンションです。暮らしてる人は信頼できる人ばかりだし……凛ちゃんも会ったことあるよね?」

「!うん!」

 前に遊びに行ったとき、マンションに住む人たちはみんなおばあちゃんと親しげで、私にも優しくしてくれてすぐ大好きになった。

 マンションの人たちと彩人くんとの距離感から、本当の家族のように信頼しあってるんだろうなっていうのが伝わってきた。


「凛ちゃんはお父さんの仕事応援したいんだと思います。その気持ちを汲んであげてください、(まもる)さん」

「……あー……うーん……」


 それでもお父さんは私と彩人くんを交互に見て渋ってる。


「しかし、いくら相手が彩人くんと言えど、年頃の娘と一緒に暮らすというのは……」


 そこで彩人くんが、ハッと思いついたような顔をした。

 
「じゃあ、隣に住むのはどうですか?」

「…………」