私と学園ラブコメしたいとか、かわいいからキスしたいとか、言う。

 手を繋ぐのもハグも、躊躇なくしてくるし独占欲むき出しだし。

 そうやって私の顔、覗き込んでじーっと見つめてくる。



「……それさぁ」




 もう、彼氏じゃん。




「ん?」



 押し黙る私に(しん)が首を傾げる。



 私はいつかの『彼氏とか彼女とかめんどくない?』という言葉や

 さっきベランダで聞いた、『余計なことすんなよ』という大人びた声を思い出す。



 (しん)は、何かを隠してる。



「……」



 私はいろんな気持ちを指先に込めて、(しん)の手の甲をつねった。


「イッテ!なんで⁉︎」


 手を押さえて苦悶の表情をする(しん)を残して、私はキッチンへ戻る。



 ……(しん)と学園ラブコメ、なんて。

 そんなの……したい。

 めっちゃしたいよ、バカ。