飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。

(しん)がいなくなる前、(しん)が月寄のことー…… 

「中志津くん!」


 (しん)が、なぜか強めにキョンの苗字を呼んで言葉を遮った。


「? (しん)がいなくなる前……?」


 首を傾げる私に(しん)がニコッと笑う。


「んー?」


 ……あ。

 (しん)がなにかごまかすときのやつだ。


「タイム」


 そう言って(しん)は私から離れる代わりにキョンの肩をガシッと抱き、私を背にしてごにょごにょと内緒話を始めた。


「……、……」

「……、……」

 
 いったいなんの話をしてるんだろう。

 地獄耳の私でも聞き取れない小ささは、さすがの(しん)

 私の耳の良さも熟知している。

 正直、こんな目の前で内緒話をされるのは、いい気持ちじゃない。


 途中キョンが「……ん゛ッ」と噴きだして、(しん)がそれを咎めるようにバシッと背中を叩いた。

 ……なんだかよくわからないけど。

 男の世界ってやつなのかな。

 私は気になりつつ、食材を切り始めることにする。

 仲良しすぎて、ちょっと妬けてくるなぁ。