「……ん。 めっちゃ牛乳」

「キョン!」


 私の後ろに立っていたキョンが、私の髪をすくってスンスンと匂いを嗅いでいる。


「ほら。 嗅いでみ」


 無表情のキョンに私の乳臭い髪をすすめられた古木くんが「え⁉」と顔を真っ赤にさせて、ブンブンと左右に振った。

 私はそれを何とも言えない気持ちで見ていると、ふと冷たい視線を感じた。


 見ると、遠くの方からこちらを見ている、複数の女の子たち。


 ……キョンの、ファン。


 吊り上がって三角になった目の女の子たちに、胃が恐怖でヒュンッとなって思わず姿勢を正す。

 キョンはそれにまったく気付くこともなく、「てか髪なが」と私の胸元まで伸びた髪を興味深そうにいじっている。


「っ、キョン、ちょっ、やめ、いったんやめて、離れよう」

「? なんで?」

「なんでって……っ」


 なんで男の子って、こういうの鈍いんだろう⁉