――そんなわけで。

 今回の事件は月寄凛の心的ストレスによる血迷った奇行ということで事なきを得て(?)、壺井先生は愛車をきれいにするべく保健室を後にした。

 私も広瀬先生にお礼を言って、ひとまず鞄を取りに教室へ行こうと、保健室を出た。



「月寄さん」

「!」


 保健室を出てすぐ、そこには、


「入江さん……」


 入江さんが、私の鞄を持って廊下の壁に寄りかかって待っていた。


「ん」


 入江さんが私に向かってぶっきらぼうに鞄を差し出してくれる。

 その顔には少しばつの悪そうな表情を浮かべている。

 
「あ、ありがとう……」


 私はそれをおずおずと受け取って、ペコッと頭を下げた。


「……」


 あー、きっと入江さん、ドン引きしてるんだろうな……。

 私だったらきっと、もう近づかないようにしようって思うもん。

 (しん)は、私と入江さんは気が合いそうって言ってたけど……これまで以上に遠い関係になってしまいそうだ。


「……落書き、なにで書いたの?」