飼い始めたイケメンがずっとくっついて離れてくれない。

「っ、先生‼」


 とっさに、叫んでいた。

 なんの準備もなく叫んでしまったから、その声は変に裏返ってしまった。

 先生と入江さんが同時にこちらを向いて、顔いっぱいに驚いている。


「……あ、あぁ、月寄か。どうした……?」


 怒り狂っていたはずの先生は、私に向かって少し優しい声で返事をした。

 それでも入江さんの腕を持つ手は離さないままだ。


「入江さんじゃ、ないです……!」

「……なんだ?」

「絶対、入江さんじゃないです!」


 私は緊張で冷汗を流しながら力強く言った。

 入江さんは目を大きく見開いて私を見ている。

 先生は私に呆れたようにため息をついてやっぱり優しい声を返した。

 
「いやな、いくら月寄の言うことでも、目撃者もいるんだ。 入江がやるのを見たってな」


 入江さんは俯いて、固く口を結んでいる。


「でも……でも、入江さんじゃないです……!」

「なんだ、証拠でもあるのか?」


 先生の表情に少し苛立ちが宿ってきてるのが見えて私は少したじろぐ。

 証拠? 証拠、は、ないな……

 あぁ、もう、うまく説明できない、頭が働かない。

 どうしよう、どうやったら入江さんを助けられる?

 絶対入江さんじゃないのに……っ


「月寄?」



 冤罪、ダメ、絶対!



 私は歯を食いしばった。